イメージング技術や実験技術の進歩により,多くの実験条件下で長時間細胞の観察を行うことができるようにもなりました. これらの進歩によって,細胞の性質や疾患の原因,投薬の応答性などを解明することが期待されています. しかし,実験で得られるデータが膨大なものになったため,これを人間の手作業で観察するのは困難です. 例えば,30種類の実験環境下で撮影を100回行った場合,1枚の画像中に100個の細胞が存在すると, データに含まれる細胞数は延べ300,000個にもなります. こういったデータから必要な情報を画像処理を用いて解析する手法を考えるのが画像チームになります.
現代の多くの病気の要因の一つとして肥満症があります. 現在の日本国民の2割以上が肥満であるとも言われており, 無自覚なうちに病気が進行すると最悪死に至るケースもあります. 肥満症とは脂肪細胞の肥大化が原因であり,早期発見・治療を行うためには 脂肪細胞の定量的な観察が必要となります. そこで松田研究室では 脂肪細胞の数と領域を位置を調べるために 領域抽出(セグメンテーション)を行っています. 従来では画像中に映り込む光の輪や明度の違いにより領域の抽出が困難でしたが, 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いることにより,抽出精度を向上させることに成功しました.
血液中を移動する白血球は異常がある部位付近では血管の壁に接着し動きがゆっくりになることがあります. そのため白血球の動きを観察することにより血管の異常を検知できれば血管の状態を定量的に評価することができます. 薬物投与前後の状態を比較すると薬効の定量的な評価を行うことができ, 新薬の開発に貢献することができると考えられます. 松田研究室ではディープマッチングなどの画像解析手法を用いて血液中の白血球の動きを追跡し, 細胞の速度ベクトルを計算することを可能にしました.